思考の泡

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ミーの思い出

田舎町に育った私の実家は食品を扱う商売をやっていて、よくネズミが出ました。そこで我が家ではネズミを退治するために猫を飼っていました。

私が生まれたとき既にミーという名前の三毛猫がいて、この猫はとても長生きしました。生まれたときから見ているので、ミーがいるのは生活の中でごく自然のことでした。子供にとっていい遊び相手で、自分とミーはごく自然なかたちで一緒に成長していきました。

この猫はよくネズミを獲りました。ネズミを獲るのは猫の本能がそううさせるのでしょうが、獲ったネズミをどうすればいいのかよく分らないらしく、しばらくじゃれた後、困ったような顔をしてそのまま放り出してしまいます。

この猫の後にも何匹か猫を飼いましたが、ネズミなど一切獲らなかったり、家の中に粗相をしたり、ミーの頭のよさを後から思い知らされました。

家族からも可愛いがられ、特にいつも餌をもらう祖父の膝の上でよく昼寝をしていました。

私が10歳くらいの年だと思います。流石にミーも老齢で動きが鈍くなってきました。そのうち立つのもやっとになり、お腹には何か出来物もできていました。裏庭の涼しいところで一日中寝て過すようになっていました。

もう先が長くないだろうということは子供の自分でも理解できましたが、あえてそれを口に出すこともできませんでした。

ある暑い日学校から帰ると母親から「ミーが亡くなったよ」と聞かされました。とても穏やかな顔をして眠っているようで、体は既に固くなり始めていました。

家の中にはミーが障子につけた爪研ぎの跡だけが残っていました。