思い出のイタリアンレストラン
学生時代千葉県柏市に住んでいました。1980年代の話です。
柏駅の東口と西口に同じ名前のちょっとしたイタリアンレストランがありました。どちらの店も喫茶店か何かだったところを居抜きで買い取ったらしく、店の作りはまったく統一感がありませんでした。しかしとにかく安くて旨いということでかなり賑っていました。たしかパスタ一皿が500円もしなかったと思います。当時としてもかなり安かった筈です。
貧乏学生にはありがたく、頻繁に利用していました。飲み会の最後の締めはここでパスタを食べるというのがお決まりのパターンになっていました。夜は各テーブルにキャンドルを灯していたような気がします。男数人で薄暗いテーブルを囲んでパスタをつついてた記憶があります。
とにかくすきっ腹を満たしてくれた店として学生時代の思い出に残る筈でした。
時代は流れ、それから何10年後、もう柏からも引っ越して別の町に住んでいました。近くに新しい外食レストランの建設工事が始まり、見ていたら看板にあの思い出の店と同じ名前が掲げられているではないですか。しかし垢抜けて小綺麗な店作りや洒落たロゴの看板など、当時の記憶にある店とは似ても似つきません。最初は偶然名前が同じだけで、思い出の店とはまったく別ものではないかと思っていました。
その店が開店し、まあものは試しと思って入ってみました。そしてサラダを一口食べた瞬間、記憶がサーっと蘇えってきました。特徴的なドレッシングが当時のものとまったく一緒なのです。やはりあの店だったのです。
その店はその後あれよあれよという間に全国展開し、どこの町でもごく普通に見掛けるようになりました。その店の名前は「サイゼリヤ」といいます。
後から知った話ですが、サイゼリヤは東京理科大学の学生が在学中に興した伝説的な起業ストーリーの店だそうです。実は自分も同じ大学出身でして、まさが自分たちの先輩が興した店だとは当時はまったく知らずに通っていました。
それにしても当時のあの薄暗い店がずいぶん成長したものです。