思考の泡

プログラミング、サイエンス、その他日常のことをゆるゆると

北海道三毛別事件

北海道の歴史が好きで、関連の小説や歴史ものをよく読みます。昨年(2015年)ちょっとした偶然から吉村昭氏の「羆嵐」という小説を読みました。これは北海道三毛別(さんけべつ)で実際に起きた羆による獣害事件を扱ったものです。胎児を含め7人が殺され、3人が重症を負った日本史上最悪の羆事件です。

その後どういう訳かこの三毛別事件を取り上げるテレビ番組をよく見かけるようになりました。それも見ようとして見たわけではなく、たまたまテレビをつけると事件の再現ドラマをやっていたりレポーターが事件の地を訪れたりしているのです。不思議なシンクロニシティー感じていたのですが、理由はすぐに分かりました。この事件が起きたのが1915年。つまり事件からちょうど100周年で、それでテレビが盛んに取り上げていたのです。

更に本の雑誌が選ぶ2015年度文庫ベストテンで「慟哭の谷 北海道三毛別・史上最悪のヒグマ事件」という本がベストワンになったりしています。(こちらはまだ読んでいません。)

まさにちょっとした三毛別祭といってもいいような状態です。この三毛別、今は事件で町興し的な観光地になっているらしく、事件を再現したオブジェなどが飾られたりしているようです。まあ機会があれが行ってみたいと思っています。

 

この三毛別事件、恐ろしいのは羆が人間の味を知っていて女性や子供ばかりを好んで襲っていることです。襲われた妊婦が腹の子供を庇おうとし「腹だけは噛まないでくれ」と熊に頼みこむシーンなどが吉村先生の作品には生々しく描かれています。これはかろうじて生き残った人間からの証言によるものなので、小説の創作ではなく史実だと思います。警察の人間は役立たずばかりで、コントみたいな失態を繰り返す中、登場するのが伝説のマタギ。これまたカッコいいのです。

 

それにしても吉村先生、熊と人間の対決話がよっぽどお好きらしく、この作品の他にも、全編熊撃ち話だけを集めた短編集「熊撃ち」があり、更に別の短編集「羆」も表題作が熊撃ちの話です。どれもお勧めです。